用語解説
時系列データの解析法などを用いて広告効果を測定し、費用対効果ROIを明らかにするなどの方法でマーケティング施策を統合的に分析し、予算配分の最適化などに活用を目指す試み。
■詳細説明
MMMとは
MMMは、マーケティング・ミックス・モデルの略称であり、マーケティング施策が与えた効果を定量化する統計学的な分析を意味している。各種広告活動や店頭販促活動、あるいは季節性や価格などのビジネス環境変動が、ブランドの販売に対してどの程度のインパクトを及ぼしていたのかを包括的に数値化、可視化する事ができる。「各要因を表現する時系列データ」と「要因間の関係を表現するモデル式」を両輪として、各要因がブランドの販売に及ぼす影響度合いを導出する。
MMM(マーケティング・ミックス・モデル)とマーケティングミックスの違い
マーケティングミックスとは、マーケティングにおける実行戦略のことを指す。構成要素である製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)の頭文字をとって「4P」とも呼ばれている。これは、あくまで実行戦略である為、マーケティング施策の効果を定量化するMMMとは違う意味を示す。
MMMの必要性
「近代マーケティングの父」と呼ばれているアメリカ合衆国の経営学者フィリップ・コトラー氏が「マーケティング4.0」と呼ぶ現代は、生活者の情報接触行動や消費行動が多様化し、それに伴い企業の事業KPI(組織の売上高などの達成目標に対して、目標達成度を評価するための目安)の設計が複雑化している。企業経営の戦略策定において、マーケティング領域への関心が高まっており、マーケティングがどのように事業貢献したかということの具体的な数値が求められるようになっている。
企業はマーケティング活動の目標を定める際に、マーケティング・ミックス・モデリングを用いることで具体的なKPIを設定し、数値目標を定めることができる。
MMMの特徴
上記に「定量化する」と書いた通り、マーケティング施策を実施した事による「効果への影響(直接効果)」、「他の施策への影響(間接効果)」を数値化できる事が特徴である。
まず直接効果として具体的には、企業内で新しい製品を作り、テレビCMでその製品を宣伝した場合に、テレビCMで宣伝した事により増加した売り上げなどが相当する。例えば3,000円の製品に対し、1,000万円の広告宣伝により売り上げが10万個増加した場合と、3,000万円の広告宣伝により売り上げが11万個増加した場合とでは、前者の方が広告宣伝にかける予算を上手く分配できていると分かる。こういった形で、キャンペーン施策の効果を数値化できると、広告予算を最適化するなどが可能となる。
次に間接効果として具体的には、同様に新製品を作った際に、テレビCMに加えてYouTuberなどのインフルエンサーにも商品紹介してもらうなど複数の媒体で広告宣伝する場合に、媒体を両方もしくは単体のみ使用する際の売り上げへの影響などが相当する。例えば広告宣伝費をテレビCM、YouTuberなどのインフルエンサーそれぞれに5,000万円ずつ設定した場合に、下記の様な売り上げへの影響があったとする。
case1)テレビCM、インフルエンサー両方使用した場合:売り上げ10万個増加
case2)テレビCMのみ使用した場合:売り上げ2万個増加
case3)インフルエンサーのみ使用した場合:売り上げ9万個増加
この場合、case3が一番、広告宣伝費の費用対効果(かけた費用に対する効果を示す数値)が良いことが分かる。
上記の例では単体の媒体を使用するといった極端な結果となったが、各媒体に対して適切な予算を設定する事ができた。このように精度の高いMMMを構築できると、数値に基づいて正確なマーケティング施策を実施する事が可能となる。
MMMの分析手順
MMMは下記の手順で進める。
(1)分析ロジックの決定
まず、分析ロジックを決める必要がある。MMMに使用する分析ロジックは、目的に合わせて変わってくる。その為、MMMにおいて具体的にどの分析ロジックを採用するのかという点は非常に重要である。
(2)外部要因、内部要因の整理
次に、外部要因(企業にコントロールできない企業の外でおこる要因。近年ではCOVID-19の流行など)と内部要因(企業にコントロールできる要因。自社商品やサービスの魅力など)を整理する。例えば、自社内で過去に実施したマーケティング施策や、競合する企業の実施しているマーケティング施策などを整理する必要がある。また、整理する粒度としても「インフルエンサーによる宣伝」ではなく、「20代前半の女性に人気のあるインフルエンサーによる商品Aの宣伝」といった形で具体的に洗い出しを実施する。
(3) 消費者行動の分析
企業の製品に合わせた消費者の購買にいたるまでの一連の流れを洗い出し分析する。
そして消費者の購買行動を定義し、顧客行動のモデリングを実施する。
(購買行動の例)
好きなインフルエンサーが商品紹介をする→商品を認知する→商品に対して興味を持つ→類似商品を調べる→商品の購入に至る。
上記の様な消費者行動のどのステップで施策をする必要があるのか整理する。
(4)データを集める
過去に実施したマーケティング施策に関するデータと、それに伴う効果のデータを集める。
(5)分析
目的に合わせて用意した分析ロジックに基づき分析を実施する。
■関連記事
【1】MMM(マーケティングミックスモデリング)で広告効果測定
https://bodais.com/info/special/mmm/
MMMは、各種広告投稿や販促イベント、あるいは季節性や価格などのビジネス環境変動が、ブランドの販売に対してどの程度のインパクト効果を 及ぼしていたのかを数値化、可視化する分析のアプローチである。MMMの目的は、「各要因を表現する時系列データ」と「要因間の関係を表現するモデル式」を両輪として、各要因がブランドの販売に及ぼす影響度合いを導出し、マーケティング予算の最適配分を狙っている。この記事では、MMMを行うための他社と共同開発した「m-Quad(エム・クアッド)」に関するサービスと、他の関連事例や関連サービスを紹介している。
【2】マーケティング予算を最適配分!進化型マーケティング・ミックス・モデリング『m-Quad』
https://bodais.com/info/white-paper/ebook012/
広告や販促の貢献量や外的要因の効果を定量化し、マーケティング予算の最適配分を推定するため、MMMは代表的な手法的であり、また「m-Quad」はその進化型である。この記事では、「m-Quad」に関する機能、特徴などを解説している。述べられている観点は以下の通りである。
1. 見えにくいマーケティング施策の効果
2. マーケティング予算の最適配分を実現する「MMM」
3. 進化型MMM 「m-Quad(エム クアッド)」
関連キーワード
関連事例