【英語】 MECE: Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive

【読み】 ミーシー

用語解説

ロジカルシンキングの基本概念の一つ。抜け漏れをなくし全体像を把握する。Mutually(お互いに)、Exclusive(重複せず)、Collectively(全体に)、Exhaustive(漏れがない)。フレームワークは、3C分析、マーケティング4P、SWOT分析、バリューチェーン等。

■詳細説明
MECEとは
MECE(ミーシー)とは、「Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive(相互に排他的に、全体を網羅的に)」の略であり、「漏れなく・ダブりなく」という意味である。ロジカルシンキング手法のひとつであり、PDCAや5W1Hなどと並んで、ビジネスフレームワークの基本となる考え方である。MECEは、マッキンゼー・アンド・カンパニーに所属していたバーバラ・ミント氏によって1970年代に提唱された。

MECEの基本
MECEの言う「漏れなく・ダブりなく」とは、物事の構造化やセグメント化、分類を実施した際に、それぞれの要素間に共通部分が存在せず、すべての要素を足し合わせると全体と一致する、という状態のことを指す。例えば、人間を年齢(10代未満, 10代, 20代, …)で分けるのはMECEだが、性別(男女)で分けるのは、実はMECEではない。


MECEの重要性
MECEな考え方は、実は日常的に用いられている。料理の材料を買うことを例にとると、まずはその料理に必要な材料が何か(全体)を考え、冷蔵庫の中にある材料と重複がないように、「漏れなく・ダブりなく」スーパーマーケットで買う材料をリストアップする、という手順を取るが、これはMECEであると言える。また、ビジネスの場では、例えばWBS(Work Breakdown Structure)は、プロジェクト完了までに必要な作業を「漏れなく・ダブりなく」リストアップするが、これもMECEであると言える。ここで「料理に必要な材料が足りない」「プロジェクトに必要な作業が抜けていた」など漏れがあった場合、それは料理もしくはプロジェクトの成否に影響を及ぼすかもしれない。一方「冷蔵庫の中にある材料と同じものを買ってしまった」「同じ作業を繰り返している」などダブリがあった場合、それはお金や時間の無駄となってしまう可能性がある。
MECEの考え方は、特にビジネスの場で必要とされるスキル(マーケティング施策を打ち出すターゲットの分類や、問題発生時の原因の切り分け等)として、重要となり得る。漏れがあると施策を考えるときに抜けが生じ、ダブりがあると何度も同じことを考えることになり非効率となるのである。

MECEの切り口
MECEは物事の構造化やセグメント化、分類を「漏れなく・ダブりなく」実施することと述べたが、その切り口にはいくつかのパターンがあり、それを以下で述べる。
・対象概念(二項対立)
互いに相反する概念で2つに分割する。例えば「メリット vs デメリット」「既存顧客 vs 新規顧客」などがあげられる。「文系 vs 理系」など、一見すると二項対立に見えるが、実は全体の一部しか表現していない、という場合もあるため注意が必要である。
・要素分解
すべての要素を足し合わせると全体に一致するように、各要素へ分割する。例えば、都道府県などの地域による分割や、年齢(10代未満, 10代, 20代, …)や金額(100円未満、100円以上)などの数値による分割、色や形などの共通点による分割、などがあげられる。
・因数分解
すべての要素を掛け算すると全体に一致するように、各要素へ分割する。例えば、売上高=来店客数(=顧客数×来店回数)×客単価(=商品単価×買上点数)、があげられる。
・時系列、プロセス分解
時系列、又はプロセスで分割する。例えば、製造業における工程や、顧客がある商品・サービスやブランドについて、認知から購入、そして再購入又は廃棄に至るまでの一連の流れを表現するカスタマージャーニー、などがあげられる。

MECEにおける優先順位
MECEでは、ダブりよりも漏れがないことの方が一般に大事である。ビジネスの場においては、物事をMECEに分割してそれで終わり、ということはなく、大抵はその結果に基づき作業や意思決定が行われる。その際に、必要な要素が漏れていると全体の作業や意思決定に影響を及ぼす。
また、完全にMECEに分割することにこだわり過ぎないことも大事である。例えば、先に人間を年齢で分類する例や料理の材料の例を挙げたが、高額な新商品のターゲットとして購買力に乏しい10歳未満の人を考慮しなくてもおそらく影響はないであろうし、料理の材料を買い過ぎても別の日や別の料理に使えばいいだけである。それよりも、完全にMECEに分割しようとするあまり、いつまでも新商品ターゲットの分類表ができない、といったことの方がその工数や時間が無駄になる可能性がある。実際には、そもそも完全にMECEに分割するのが難しい場合もあるだろう。
上記に関連して、要素に優先順位をつけることも大事である。まずは大雑把に分類(大分類)し、さらに細かく分類(小分類)しようとする場合、その大分類の要素の優先順位や重要性によっては、細かく分類する必要がない(施策を考える必要がない)、又は後回しにして先に優先順位の高い大分類の要素について、小分類及び施策の検討を行う、といったことも考えられる。

MECEを用いたフレームワーク
即座にMECEな考え方を実践するのが難しい場合、慣れるまでは、自身の目的に適った、既にMECEな考え方が適用されているフレームワークを利用するのが良いだろう。代表的なものを以下にあげる。
・3C分析(マーケティング環境を「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の三要素に分けて分析する手法。完全にはMECEになっていないが、マーケティング分析には十分である)
・SWOT分析(マーケティング環境を「Strengths(強み)」「Weaknesses(弱み)」「Opportunities(機会)」「Threats(脅威)」の四要素に分けて分析する手法)
・4P分析(マーケティング施策を「Product(製品)」「Price(価格)」「Place(販売場所)」「Promotion(販促)」の四要素に分けて分析する手法)
・バリューチェーン(商品やサービスが顧客に提供されるまでの一連のプロセスを価値の連鎖として捉え、各プロセスの問題点などを分析する手法)

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